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私はいつも昼食は中庭で決まった人と取る。
「せれな!」
「おとちゃん、お待たせ。」
真夏だが、昼時間になると、東の校舎が影になり、そこまで暑くない。
さらに風通しも良く、気持ちがいい。
この時期がから人は少なくて静かな空間で、植物が多く、常に緑の香りに包まれる落ち着くスポットだ。
中庭の一番端のベンチにたった一人の友達が待っていた。
彼女は隣のクラスの真木浪乙羽ちゃん。
私はおとちゃんと呼んでいる。
おとちゃんは1年の時初めてできた友達でずっと一緒にいた。
2年になってクラスは別れたが、昼休みは今も一緒に過ごしている。
たまに放課後や休日も遊びに出かけることもある。
「少し待たせちゃったよね、ごめん。」
「ううん、私も今来たところだし!」
おとちゃんはとにかくパーフェクトな女の子だ。
いつも明るくて愛想よくみんなに平等だ。
さらに顔もスタイルも最高にいい。
たまにあるお茶目なところや天然なところがギャップを生み、彼女を知れば知るほど、彼女の魅力がたくさん出てくる愛され系女子。
こんな子が私とずっと友達でいてくれるだなんて、夢のようなことだった。
「明日から補習だよー。いやだなー。」
「うん、そうだね。今回補習はいくつあるの?」
「数ⅱと、古文と、英語と、科学。」
「多いね」
おとちゃんは勉強が苦手でいつも成績がギリギリらしい。
「せれなはあるの?」
「…数ⅱだけ。」
「また数ⅱ落としたんだ!あんなに勉強してたのに残念だね。」
「う、うん。少し難しかったかな。」
「だよね!数学って本当に難しい!でも数ⅱ補習一緒だね!」
「また一緒だね。」
私は数ⅱを落とした。
とゆうか、あえて落とした。数ⅱはいつも意欲的に学習するので、ほとんど解けたと思う。
しかし、響谷先生の補習を受けたいあまり、テストの半分は誤解答を書き、数ⅱを落とした。
「補習が終われば、夏休みだね!いっぱい遊ぼうね!」
「うん、遊ぼうね。楽しみ。」
満点の笑みのおとちゃん。
夏休みが待ち遠しく見えた。
でも私はその逆だった。
夏休みなんてなければいいと。
1ヶ月近くも響谷先生と会えなくなる。
新学期始めってからほとんど響谷先生を見るのが当たり前なのに、1ヶ月も見ることができないだなんて、絶望的だった。
「もー!せれなってそんな落ち込んじゃって!1教科の補習なんてすぐ終わるよー!私なんて、4つだよ。泣きたいくらい。」
「え?」
別にそんなこと思ってない。
「そんな暗い顔しないで、笑って!せれな、前髪切ったりコンタクトにしたりして可愛くなったのにもったいないよー。」
驚いた。私、今も顔に出てたんだ。
「そうだね、ありがとう。」
私もおとちゃんみたいにニコニコしてたら、きっと彼女みたいに友達が増えて、好きな人ともうまくいくんだろうか。
ふいにスマホで時間を確認する。
『星崎葵さんからメッセージ1件。』
あれ、いつの間に星崎くんの連絡先交換したんだろう。
そういえば、昼休み直後私は彼にスマホを渡した時に交換してたんだ。
メッセージを確認する。
メッセージではなく、私のみっともない顔の写真が送られていた。
また私のことをからかってきた。
「あはは、せれな顔赤いね!」
横から写真を見てきたおとちゃん。
恥ずかしいから、見られたくなかった。
「送ってきたのって、星崎葵…。あ!そういえば、二人同じクラスなんだっけ!」
「うん、星崎くんのこと知ってるの?」
「星崎くんって結構うちの学年では有名くんだよ!他校にもファンみたい。」
「そうなんだ。」
意外だった。
「星崎くんとメッセージのやりとりしてるってなんで?」
「ただ変な顔の写真撮られて、送られただけだよ。私のことからかってるだけだと思う。」
「もしかして、こんなに顔赤いって星崎くんのこと好きなの?」
「まさか。」
即答。
反射的に否定した。
だいぶ引きつった顔をしてる自覚はある。
「あ、そうなんだ〜。」
おとちゃんは少し驚いた様子だった。
私は星崎くんに『写真消してください。』と返信をため息をしながら送った。
きっと星崎くんは消していないんだろうな。
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