水無瀬せれなはわかりやすい。

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月曜日。 いつもの時間、いつもの車両。 だけど今日はいつもと違った。 あいつが今日この時間のこの車両いなかった。 朝練を終えて、教室にすこし駆け足で向かったが、いつもいる隣の席のあいつがいなかった。 ホームルーム後、1限目の英語。 何故か頭に入らない。 これが上の空ってやつかな。 1時間ぼーとしたまま、英語の授業が終わった。2限目は数学だ。 始業の鐘がなり、響谷先生が教室に入ってきた。 「はい、今週も数Ⅱがんばっていきましょー。」 響谷先生、週明けなのに、目の下のクマはすごくい。 朝のホームルームも今のあいさつも棒読みだ。あいかわらずひげの長さにむらがある。 先生たちに怒られないのか? 「じゃあ、前回の復習で」 響谷先生の言葉を止めるようにガラガラと教室の後ろドアが開いた。 教室にいる人すべて後ろをみる。 全員きょとんと言葉は失い、目が点になる生徒もいた。 そこには、初めて見る女の子がたっていた。 その子は頬を染め、困り顔だ。 「あ、あの、遅れました。先生、すいません。」 「ああ、水無瀬、今始まったばかりだ。席に着いなさい。」 「は、はい。」 は?水無瀬? あの、陰キャで俺の近くにいるとすぐに赤くなるあの水無瀬? 鬼太郎みたいに前髪が長くて、メガネで顔もはっきりみえなかった水無瀬か? そこにいるのは前髪が眉毛の位置より短く、メガネをしてない女の子だ。 その子は俺の席の隣に向かう。 みんながざわつく。 集中視線にたえきれず、俺に近づくほど顔が赤くなる。 今はっきりと赤面になるところをみた。 こいつやっぱり水無瀬だ。 いつも前髪とメガネで隠れていたが、こんな顔が赤くなるんだな。すげえ。 「みんな静かに。」 先生がざわつきをとめる。そして水瀬が席に着いた。 「お、おはよう。」 俺は一応いつものようにあいさつをした。 「う、うん。おはよう。」 間近ではじめて顔を見た。 こんな顔だったのか。 別にブスじゃないな。 目も二重だったんだな。 あ、そういえば 「ねえ、メガネどうしたの?」 「ああ、コンタクトにしたの。コンタクト全然入れれなくて、遅刻しちゃった。」 だから今日朝いなかったんだ。 照れながら答える姿を見て、はっと先週のことを思い出した。 こいつ、俺が勧めた前髪カットとコンタクトをしてきたんだ!!! 再度こいつの顔をみる。 顔がまだ赤い。 ああ、やっぱりこいつ俺のこと好きなんだなと確信が増した。 それと同時に、前髪短いほうが似合う、コンタクトのほうが似合うと思った。
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