隠してること

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隠してること

「ないっ。」 「どうした?」 危険を知らせるサイレンの音が消えると操縦席へ向かうと、設備を確認し火星宇宙ステーション(火星付近のためその名称)へ連絡を取ろうとしたのだが… 「データが消えてる!このまま木星へ行くしかない…」 繋がらず、火星へ向かう軌道のデータが無かった。 彼女が絶望するのも無理はない、燃料エネルギーはギリギリ。 そして木星ステーションは改修のため地球へ帰っている…つまり通行止めのはずの軌道だ。 万が一でも木星に墜落すれば地表にたどり着くまでに衝撃波で… それに木星はガスと水素の惑星だ、生きていけない。 「木星付近にいる探査機を見つけるしかない。候補は2つ…操縦は僕がやる。」 「操縦は私がやるわ。あなたは失敗する。」 「さっきからずっと思ってたけど、先が分かっているかのような口振りだね。隠してること、教えてくれたら操縦を任せる。」 彼女の言動にはさすがに腹が立ってくる、訳を話してほしい。理由を聞けば許せるかもしれないし。 「……分かった。ここで争ってる時間はないから言うわ。」 どうしても操縦は渡したくないようで、従ってくれた彼女は操作しながら話し始めた。 「私は2度目の人生なのよ、といっても目覚めてから思い出したけど。1度目、あなたは死んだの。だから、変えるためにここにいるの。」 それは自分が死ぬという衝撃的な話だった。 これが彼女の隠していたこと。
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