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私の顔を覆うスマート・フェイスシールドが、「ピピッ」と鳴った。
注意を喚起する音だ。
フェイスシールド面に表示された矢印に従って、右上に顔を向ける。
「おじいちゃん、どうしたの?」
「何かが飛んでくる」
右手の河川敷で練習中の、サッカー少年がクリアしたボールらしい。
放物線を描きながら、まっすぐ孫娘を目指して飛来する。
私は落下予測地点に回り込んで、ボールをキャッチした。
「ナイスキャッチ!」
サッカーボールを胸に抱えた私に、美咲が声を掛ける。
いい気持ちだ。
孫娘を守れた、という充足感で胸が満たされていく。
「すみませーん。大丈夫でしたかー」
土手をあがってくるサッカー小僧の声に、私の夢見心地が削られた気がした。
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