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 電車の時間を聞かされているにも関わらずあのあとすぐに家を出て駅に着いた航大は、そこで二十分近く待つことになった。  しかし、それぐらい大したことではない。  もし時間があるからと何か別のことを始めて、ついそちらに気を取られて雪音の帰りに間に合わなかったら。  そう思うと、いっそ家を出てしまおうという結論に達したのだ。  ただ待つだけなら家でぼんやりしていても駅で立っていても変わらない。  そもそも今日が義弟の遅くなる日だと認識していたら、自分の帰宅時間そのものを調整して駅で落ち合えるようにしたのに、とそちらの方が残念だったくらいだ。  雪音の塾の予定は、迎えを忘れないようにきちんとスケジュールに入れている。  まさか曜日が変わることがあるなどと考えもしなかった。  新しい時間割を確認して入れ直さないと、と航大は頭の片隅にメモをする。  大学もアルバイトも、それ以外のプライベートも、航大は暇を持て余しているとは程遠かった。  それでも、一番は常に雪音だった。義弟以上に大切なものなどなにもない。彼のためにどうにか時間を空けるのは当然で、楽しみですらあった。  先ほどの反応からも明白だが、義母は航大が義弟を迎えに行くのを反対したりはしないが推奨もしていない。  雪音が遅くなる日に航大が気づかず家にいても、向こうから声掛けしてくれることはないだろう。  だから自分で管理するしかないのだ。
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