【2】

5/5
前へ
/59ページ
次へ
 その後、一家は雪音が中学に上がるのに合わせて転居した。  両親の通勤と子ども二人の通学も考えて、義弟が入学する予定だった中学校の学区内である今の3LDKのマンションへと。  部屋数も増えたので、航大と雪音はそれぞれ個室を与えられることになった。  航大にとっては高校三年生でようやく得た個室、ということになるが、それまでも義弟との同室生活を不満に思ったこともなかった。  むしろ常に雪音の動向に気を配れる環境がありがたかったくらいだ。  口に出したら少し、いやかなり危ないので、さすがに表に出さないだけの分別はある。  義弟の方も航大と一緒が嫌だったわけではなさそうとはいえ、やはり初めての自分だけの部屋は嬉しいようだった。  ただ、雪音はそれまで一人きりの部屋で寝たことがない。  中学生男子として恥ずかしく思うのか決して言葉にはしないものの、少し寂しいと感じる日もあるらしく用もないのに口実を並べては航大の部屋に居たがったりもした。  おそらく世間一般の男兄弟と比べれば少し異質な関係だったのかもしれないが、二人ともそれを変えたいとも変えようとも思ってはいなかった。
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!

94人が本棚に入れています
本棚に追加