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    ◇  ◇  ◇ 「なんか、いきなり寂しくなるわねぇ」 「? なんのこと?」  夕食後、唐突な母の言葉に雪音は疑問を呈す。 「え? 雪ちゃん聞いてないの? 航ちゃんが真っ先に知らせてると思ってたわ」 「……何?」  嫌な、予感がした。  理由はわからないまでも、悪いことが起こる前兆のような。  そしてそれは外れてはいなかった、ということなのだろう。 「だから、航ちゃんが家を出るって話。大学の近くに部屋借りて一人で住むのよ」 「え、航ちゃん、が? いつ!?」  まったく想定外の母の言葉に、雪音は即座に問い返した。 「これから探すんだけど、学生向けの安い物件で大学に通いやすいところってくらいで航ちゃん他に拘りないらしいからすぐ決まると思うわ。不動産屋さんにはもう連絡してて、週末に行っていくつか紹介してもらって見て回る予定だから」  航大がこの家を出ることそのものに、母はなんの抵抗もなさそうだ。 「なんで、……いつから、そんな」  勝手に口から零れる声。  母は仲のいい兄弟が離れることを寂しがっているとしか感じていないだろう。 「一昨日よ。ほらパパとママが結婚記念日のディナーで泊まって帰って来た日。その夜に言われたの」 「あの、日、の──」  航大が、雪音を抱き締めてキスしたあの夜、の次の日だ。
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