【4】

6/7
前へ
/59ページ
次へ
《航ちゃん、お願い、住所教えてください。どうしてもダメなら外でもいいから会いたい。会って話したい。俺のことキライなら、直接はっきりそう言って欲しい。でないと終われないから。》  雪音が精一杯の覚悟を決めて送ったメッセージ。  行間から(にじ)み出る想いを読み取ってくれたのか、数時間後に航大から住所を知らせる返信が届いた。 《来るときは前日までに連絡して。予定空けるようにするから。》  添えられた言葉に、雪音はカレンダーを見ながら次の土曜日はどうかと尋ねるメッセージを送る。 《いいよ。住所だけじゃわかりにくいと思うから、駅まで迎えに行く。着く時間わかったら知らせて。》  間を置かずに返って来た義兄からのメッセージ。  塾で遅くなるときに、「駅まで迎えに行くから」と電車の時間を尋ねて来ていたのと同じ文面に、雪音は胸がいっぱいになった。  彼はきっと、芯の部分では何も変わっていない。だからこそ、今のこの状態の理由が知りたかった。  たとえそれが、破滅のドアを開ける行為だとしても。
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!

94人が本棚に入れています
本棚に追加