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《航ちゃん、お願い、住所教えてください。どうしてもダメなら外でもいいから会いたい。会って話したい。俺のことキライなら、直接はっきりそう言って欲しい。でないと終われないから。》
雪音が精一杯の覚悟を決めて送ったメッセージ。
行間から滲み出る想いを読み取ってくれたのか、数時間後に航大から住所を知らせる返信が届いた。
《来るときは前日までに連絡して。予定空けるようにするから。》
添えられた言葉に、雪音はカレンダーを見ながら次の土曜日はどうかと尋ねるメッセージを送る。
《いいよ。住所だけじゃわかりにくいと思うから、駅まで迎えに行く。着く時間わかったら知らせて。》
間を置かずに返って来た義兄からのメッセージ。
塾で遅くなるときに、「駅まで迎えに行くから」と電車の時間を尋ねて来ていたのと同じ文面に、雪音は胸がいっぱいになった。
彼はきっと、芯の部分では何も変わっていない。だからこそ、今のこの状態の理由が知りたかった。
たとえそれが、破滅のドアを開ける行為だとしても。
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