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でもね…
「かなしい……事だけじゃ、辛いこと、だけじゃない、んだ……。やさし、い人、いた…の。
多分、その人…が僕のお母、さんだよ…ね」
「律月君…」
ガラっと勢い良く医務室の扉が開いたら、和之さんが息を切らして現れた。
「律月!大丈夫か!?」
おろおろしてる。
「…うん。もう、大丈夫…」
「そうか…良かった…」
そう言うとやさしく抱きしめてくれた。
「律月君。アレの名前を聞いてしまって全て、思い出したそうです。」
「何?」
和之さんは少し考え込んで、改めて僕を見た。
「律月。やっと…やっと奴に罰を下す準備ができたんだ。」
「え?」
「「え?」」
「先程準備が整ってね。叶にはもう伝えてる。律月。もう大丈夫。奴はいなくなる。」
「和…之さん…」
「また身体治して、今度こそ友人達と学園生活を過ごすんだ。」
「……っ」
急に涙がこぼれ落ちた。
安心したのか何か分からないが、止まらない。
やさしく二人は抱きしめてくれる。
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あれから1ヶ月
僕はまた入院生活に戻った。
入院中は蒼汰や神崎先輩。白羽先輩にクラスメイトの真央君がお見舞いに来てくれた。
生徒会の人とは会っていない。
蒼汰が言うには、ちゃんと仕事をしてるそうだ。
そして徐々に身体の調子も良くなっていった。
「律月。調子はどうだ?」
今日も今日とて和之さんが見舞いに来てくれた。
「すごく良いよ。」
「そうか。」
安心した表情の和之さん。ずっと心配をかけてしまった。ずっと…
すると和之さんは話そうか話さないか葛藤して、話しだした。
「……過去を思い出すかもしれないと思って律月には言ってなかったが……律月のお母さんの名前は千歳って言うんだ。とても綺麗で芯のある優しい女性だった。」
懐かしいような、いつくしむように語った。
「……うん。…僕もね、今は少しわかるよ。あの頃は言葉が分からなかったけど、千歳さん……お母さんは僕の事を愛してくれた。頭をなでてくれて、その時間が僕はすごく、好きだった。」
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