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第一章
ジリリリリリリ
携帯の目覚ましが朝から騒々しく鳴っている。ガミガミと口うるさい上司の次くらいに煩いこの音がイライラとした気持ちを倍増させているような気がする。とはいえこれがないと起きられず仕事にも遅れてしまうので、仕方がないと言えば仕方がない。今日に関しては、昨日飲みすぎたせいのか頭痛が酷く気分が最悪だ。
「んー、うるせーな....」
目覚ましが鳴っている方に手をやり、その音を止めようとした。
ふわっ
携帯を触ったはずが、かけ離れたような柔らかい感覚に一瞬だけギョッとする。
「えっ。ふわっ.....?なんだこれ、髪の毛?」
寝起きでまだ完全には開かない目を恐る恐るゆっくりと開けた。
「なっ!?」
「先輩、おはようございます。寝起きの顔も可愛らしいですね」
そこには、上半身裸の男...。同じ部署の後輩が煩い目覚ましを持ちながらこちらを見つめていた。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!???!?」
鳴り続ける目覚ましよりも更に煩い声が俺の口から溢れ出てしまった。
とりあえず目覚ましを後輩の手から取り上げて止め、少し冷静になって考えてみることにした。すると、いつもは着ているはずの服の感覚が無いことに気が付いた。そして布団をめくってみると見事な全裸姿。しかも腰がめちゃくちゃ痛い。もっと言えば.......
「ケツ....痛いんだけど.....」
いやーな予感が脳裏をよぎる。裸の男がベッドで2人きり。痛む腰と尻。あー、これは....
バッと勢いよく後輩の方を振り向くと、相変わらずニコニコしてこちらを見つめていた。
「お前、昨日の記憶....ある?」
お願いだ、頼む、何も無いと言ってくれ。ただひたすらそんなことを願っていたが、そんなことを言うはずもない。
「ええ、もちろんありますよ。先輩のあんな姿、一生忘れられないいい思い出になりましたよ」
妖艶な顔で微笑む後輩。その顔を見て、昨晩の記憶が少し戻ってきた。
会社の飲み会の帰り、終電を逃した俺は後輩に介抱され、そのまま後輩の家へ直行。そして.....
軋むベッドの音、後輩と自分の吐息が交わり身体を淫らにくねらせている俺。後輩の顔....。
「あーこれ完全にやったな」
T大学卒で成績優秀、容姿端麗、おまけに営業部のエース。そんなスパダリ後輩に
「先輩?会社遅れちゃいますよ」
「あ、お、おう」
抱かれてしまったようです
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