その手の温もりで俺は

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達也は一人息子だったし、ご両親にとって遅くにやっと出来た子どもだったと、達也から昔聞いたことがあった 私たちにはたった一人の大事な息子だったんです あなたが達也に車を貸さなければこんなことにはならなかった あなたが達也を殺したんです 達也を返してください 達也を返してください 泣き叫びながらお母さんからつかみ掛かられ、殴られたけど 痛みなんか感じなかった 俺の車で達也が死んだ 俺の車で 俺もショックでただただ頭を下げ続けることしかできなかった それ以来、他人に車を貸さないと決めた 絶対に貸さない 仕事場でちょっと車を貸してくれと言われても頑なに貸さない俺は変わり者かケチだとか言われているようだったが そんなことはどうでもよかった あの大事にしていたスポーツカーはそのまま廃車になった あれ以来スポーツカーは乗ろうとは思わなくなっていたし、あの出来事も誰にも話さぬまま10年が過ぎようとしていた
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