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174センチの俺だって決して小柄な方ではないと思うのだが、相手が悪過ぎる。
まるで皇居周辺をランニングする早朝ランナーのような軽やかな足取りで、優雅に俺を追い掛ける彼。
元々のコンパスの長さの違いのせいで、こっちは全力疾走しているにも関わらず、その距離の差は縮まる一方だ。
......クソ、何から何まで腹の立つ!
「まだなんか用?神宮寺」
手首を掴まれたから渋々振り返り、無理やり笑顔を作って聞いた。
すると彼も艶っぽく微笑み、俺の髪に手を伸ばした。
「うん。頭に葉っぱ、付いてる」
彼は耳元で甘く囁くように言ってそれを取り、俺の眼前でヒラヒラさせた。
ゾクリとするほど色気ある声と表情に、体が小さく震える。
......コイツ、マジで俺と同い年かよ。
そんな俺の事を嘲笑うみたいに、満足げに彼の綺麗な口元が弧を描き、神宮寺はツヤツヤの茶色い長髪を風に靡かせ、Uターンして俺の元から去って行った。
ホント、何なの?アイツ。
......あの男、いちいち心臓に悪いんだよ。
***
文化祭最終日の、夕刻。
二組がやっているメイド&執事喫茶で紅茶とスコーンを頂きながら、俺と同じクラスの悪友 孝明に聞いた。
「そう言えば神宮寺って、彼女とかいんのかな。
いっつも違う女の子、侍らせてるみたいだけど」
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