その男、神宮寺 統

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「山田様も、ぜひともお召し上がり下さい。  はい......あーん」  手袋をキザったらしく外し、素手でクッキーを俺の口元へ。  なんでやねんと心の中で似非関西弁で突っ込みつつも、拒否ると神宮寺ファンの女子達(神宮寺ガールズ)から非難されそうだったから渋々口を開けた。 「美味しいですか?山田様」  手についたクッキーの粉をペロリと舐めて、至近距離で妖艶に笑う神宮寺。  ......悔しいけど、メチャクチャ美味い。  こくんと小さく頷くと、神宮寺はまたにっこりと微笑み、俺の頭を優しく撫でた。 「はぁ......今流行りの、料理男子ってヤツですか。  流石は神宮寺様、何をやっても完璧でいらっしゃる」  モグモグと口を動かしながら、もはや酔っ払い親父のようにネチネチと絡む俺。  神宮寺はそれに気を悪くするでもなく、少し考えるような素振りを見せ、静かに首を横に振った。  そして謎の執事プレイにはもう飽きたのか、いつもの口調に戻り答えた。 「ううん、違う。  俺普段は、料理もスイーツ作りもしねぇもん。  調理実習で、作って以来だわ。  なのにこの出来映えって、俺ってばマジ天才じゃね?」  なん......だと?  ......それはそれで、やっぱムカつくんだが。  でもそんな風に考えているとは思われたくなくて、そうだね、とだけ答えた。  つまらなさそうに歪む、彼の形の良い唇。  でもそれすらも、ちょっと色っぽくて......相手は野郎だと言うのに、迂闊にも少しだけ見惚れそうになった。
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