その男、神宮寺 統

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その男、神宮寺 統

「ウソだろ......俺がまた今年も、二位だと?」  文化祭恒例の、王子様総選挙。  事前に女の子達にちゃんと根回しもしておいたから、絶対に一位を獲れると思っていたのに。  ......掲示板に貼り出されたその結果を見て、愕然とした。  二位は俺、山田 太郎。  ネタなどではなく、これは正真正銘俺の実名である。  覚えやすい名前の方がいいだろうという至極単純な理由で、親父につけられた。  確かに一度聞いたら忘れられないとは言われるが、残念ながらこの名がありがたいと思った事は、これまで一度たりともない。  そして昨年同様、今回も一位に選ばれた男の名は、神宮寺(じんぐうじ) (すばる)。  名は体を表す、とは良く言ったもので、金持ち揃いのこの校内でも群を抜くセレブリティ。  統という名前からも推測出来るように、彼は人々を統べるべく生まれてきた存在。  神宮寺グループの現会長の孫であり、次期後継者と言われている。  親父が運良く成り上がっただけの成金の俺とは違い、生粋のサラブレッド様なのだ。 「あっれー?山田くーん。  去年に続き、今回も二位なんだ?  ......二位が、好きなの?」  いつもは君付けでなんて、絶対に呼ばない癖に。  嫌味ったらしいちょっとハスキーなバリトンボイスが聞こえたかと思うと、背後から羽交い締めにされた。 「出たな、性悪神宮寺!  ......でもこれで勝ったと、思うなよ!」  彼の鼻先に人差し指を突き付け、それだけ言って彼の巨体を振り払い、勢い良く駆け出した。
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