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【超古典的】落としもの大作戦(おまじない付)
あのね、実は気になる人がいるんだ。
私が勇気を出してそう切り出した時、玲奈お姉ちゃんはにんまりと、まるで口裂け女かと恐怖を覚えるぐらいのビッグスマイルを浮かべた。
「そっかそっか。智恵美ももうそんなお年頃か」
妙に嬉しそうにウキウキしながら、周囲に散らかった物を片付け始めるお姉ちゃんに、恥ずかしさが込み上げた。
服と物が足の踏み場もない程散乱した汚部屋の中、お姉ちゃんが確保してくれた小さな空間にちょこんと座る。ベッドに腰かけたお姉ちゃんの無造作に投げ出した生足が、目に眩しい。
お姉ちゃんはギャルだ。高校三年生にも関わらず金色に近い茶髪で、制服はもちろん、家にいる時だって膝上ニ十センチよりも長いパンツやスカートは履かない。羨ましいぐらいほっそりした足を常にむき出しにしていないと気が済まないぐらいには、筋金入りのギャル。
スタイルも良ければ顔も良いので、恋の噂には事欠かない。実際に彼氏の姿を見た事はないけれど、全身からびんびんとモテオーラが発散されていて、私に比べれば恋愛に関しては百戦錬磨の達人である事に疑いの余地はなかった。
部屋の汚さは達人どころか名人……怪人レベルだけど。
「いいよ、あたしに任せて。その彼と仲良くなれる作戦を考えてあげる」
私から恋愛相談をするなんて初めてにも関わらず、自信満々に胸を張るお姉ちゃんに、私はほっと胸を撫で下ろした。持つべきものは美人な姉だ。
「作戦? そんなにすぐいいアイディア出るの?」
「もちろん。まずそのためにはどんな相手なのか教えてくれる?」
「うん」
すっかりお姉ちゃんを信頼しきった私は、彼について自分が知る限りの情報を打ち明けた。
後悔先に立たず、という言葉の意味を知ったのはこのずっと後の事である。
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