夕焼けまでのふれあい

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僕は幼い頃から小説家を目指している。 デビューを夢見てこれまで幾度となくコンテストに応募してきたが、文才にも運にも恵まれず、受賞したことは未だにない。 そして、近々応募するコンテストを最後のチャンスとしている。なぜなら、落選したら小説家を諦めて家業を手伝うために実家へ戻ることを両親と約束してしまっているからだ。 ちなみに、今回の応募のテーマは『ノンフィクション』。多少なりのフィクションを交えつつも、基本的にはありのままを書き表すのが条件になっている。 なにはともあれ、この創作期間が僕のこれからを左右するのだ。なのに、鳴り止まない騒音のせいで夢が絶たれようとしてしまっている。 しかも追い討ちをかけるように、マンションの掲示板に貼ってあったお知らせによると、この工事は応募締切の同日に完了するというものだった。 住宅街で静かな地域であるにも関わらず、工事業者はお構いなしに大きな音を立てて作業を進めている。そのせいで、集中したいのに話の展開も結末もなにひとつ考えがまとまらない。 カフェなどで執筆すると言う手もあるが、創作意欲が一番湧くのが自分の部屋なのだ。おまけに神経質でひとの多いところは苦手な性分である。 ……これは、小説家を諦めろと言う神からのお告げなのだろうか。
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