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「え?いや、ここは静かな住宅街なのに毎日そんな大きな音を立てられたら迷惑なんですけど……」
「そうか。それでも無理なものは無理だ」
「……はい?」
「私たちも期限が迫っていてな、手を緩めることはできないんだ。しかも1日で作業できる時間が非常に短い。ま、深夜じゃないだけでもよしと思ってくれ」
流れ出る汗を拭きながら、またもやとびっきりの笑顔で断られてしまった。そのひとはそれだけ言うと、なにごともなかったかのように止めていた作業を再開させた。
なんなんだこのひとは。とても接しづらい。
でも、このままあっさりと引き下がるわけにはいかない。
「っ、僕には小説家になると言う夢があるんです!」
「……」
「なのに、その無遠慮な騒音のせいでまったく集中できないんですよ!ハッキリ言ってストレスが溜まりまくってるんです!」
相手は電気ドリルで穴を掘っているので、かなり声を荒げなければいけなかった。本来、大声を出すのは得意ではないが、そうも言ってられない。
すると、作業員は電気ドリルをピタリと止めた。
「君、小説家になりたいのか」
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