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プロローグ
──どうして、こうなってしまったのだろう。
降りしきる雨が、土や石の色を変えていく。
黄土色から茶色へ。灰色から黒へ。
目の前の墓石も例に漏れず、綺麗な灰色だった墓石はすっかり黒くなり、『花森家之墓』と書かれた文字にはほんの少しだけ、水が溜まってしまっていた。
そんな様子を、私は傘も差さずにぼぅっと見つめる。
雨は嫌いだ。出来れば外出したくないし、出ても出来るだけ長居したくない。それでも、こうして雨の中、しかも傘もささずにここに立っているのはしっかりとした理由があった。
「お姉ちゃん・・・・・・」
墓を見つめながら、あの日のことを思い出す。雨が降っていたが故に起きてしまった、不慮の事故。私は、それで姉を失った。
あの日以来、あの事故を思い出してしまう雨は嫌いになった。
あの日、雨さえ降らなければ──
「私は・・・・・・」
そこまで言ったところで、少し離れた所に誰かが立つ気配がした。
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