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ポプラの林を抜けると、道の両側に草の茂った原っぱが広がっていて、秋の虫の声が響いていました。黒猫はじっと息を殺してその場に伏して、虫がピョン、と飛び跳ねたところを前足でひっぱたくのです。
今日も虫を追いかけて遊んでいた黒猫でしたが、ふと、道端に落ちていたものに気がつきました。それは小さな袋です。人間が落としたのでしょう。
「なんだろう」
黒猫は虫遊びをすっかり忘れて、興味津々に袋をつついてみました。青と白のチェックの袋は、実は先と先を結んだハンカチでした。
その結び目がほどけると、中から何かヘンテコなものが出てきました。米粒の片方だけに毛が生えているような形の、小さなものでした。
「何かの種だな。でも何だろう。フクロウのやつなら知ってるかな」
たった今見つけた宝物を誰かに取られないよう、草の茂みにハンカチごと隠し、ヘンテコをひとつだけそっとくわえてから、黒猫は闇の中を走り出しました。
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