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ぼくが与えるエサ(ごはんの残り)を食べて生き延びたミヤコちゃんを連れて、ぼくは高校卒業と同時に上京することにした。
一人暮らしを始めたので、もう堂々とミヤコちゃんを入れたケース(凝りはじめたぼくは箱庭風のものを作ってあげた)を部屋に置くことも出来たのだけれど、すぐに恋人が出来て部屋にも呼ぶようになったので、やっぱりミヤコちゃんは人目につかない暗い戸棚の中に仕舞うことにした。
その頃にはもうミヤコちゃんも薄暗い方が慣れてきたのか、明るい場所に置いた時の方がおびえる様子を見せるようになっていたからちょうどいいのかもしれない。
怖がると、ミヤコちゃんは頭部を柔らかな胴体に引っ込めてうずめるような動作をした。手があれば、顔を覆うような仕草だったのかもしれない。
恋人との付き合いは順調で、大学を卒業して就職しても続いた。同棲をし、しばらくした頃に結婚を申し込んだ。快諾してもらえて、ぼくはとても幸福だった。
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