落としもの彼氏

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私がスマホを拾ったのは、週末に祖母を東京駅へ見送りに行った時の事だ。待合室で祖母と電車を待っていた時の事。座った座席の下に落ちてるスマホを見つけた。拾い上げた時、祖母が乗る電車の乗車案内アナウンスが流れ、すかさずスマホをバッグにしまい込んで席を後にした。 改札で祖母を見送り帰路についた。地下鉄とバスを乗り継ぎ家へ着いたのは、夕方だった。 夕飯後、部屋へ戻ると拾ったスマホに落し主らしい人物からメールが届いていた。東北に住むというその落し主は、来週仕事の関係で上京するのでその際に東京駅で返してほしい旨が書かれていた。 受け渡し日当日、東京駅で待ち合わせ場に現れたのは近所に住む幼馴染だった。私は状況が飲み込めず文字通りポカン顔をしていた。 「こんな回りくどい事してゴメン。キッカケが中々無くて仕方無くお前の婆ちゃんに協力してもらったんだ」その言葉から色んな事柄にリンクして行った。小さい頃によく家へ遊びに来て祖母に面倒を見てもらった幼馴染。祖母を駅まで見送りに行った日、待ち合わせ室で座席へ先導した祖母。改札へ向う途中、拾ったスマホを事務室へ届けるのを止めた祖母の謎の行動。祖母のイタズラっぽい笑みが脳裏に浮かんだ。 「こんな事で付き合えると思わないで。デートしてみてから彼氏にしてあげるか決めるんだから!。」 どこか緊張した幼馴染の手を握りしめ私は、駆け出していた。
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