双眼鏡と一眼レフ

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あの春とは違う冷たい風に吹かれながら、私は横にいるソラをちらりと見る。 ソラは既に双眼鏡を覗き込んでいた。 私も一眼を構えると、ファインダーを覗く。 眼前の景色を切り取ると、いつもと変わらぬ華やかな世界が広がっていた。 地上からは見られない広い夜空には細い下弦の月が浮かび、爛々とした星が点々と散らばっている。 まるで空で輝いていた星たちが地上に落ちてしまったかのようだ。 その美しさに私は思わず息を漏らした。 「やっぱり新宿は汚いね、好きじゃないや」 ソラは双眼鏡を下ろすと、確かにそう言った。 突然のことに驚きを隠せない私は、思わずえっ、と声を上げる。 「こんなにも綺麗なのに、どうして?」 そう尋ねるとソラは私に向き直る。 そして彼女は首から双眼鏡を取ると、私に差し出した。 「見てみなよ、このなんでも見えちゃう双眼鏡で」
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