下校時間

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下校時間

ホームでは、発車のプロロロロ…という音が鳴り始めている。 私はまだ改札をくぐったところ。 全速力で階段を駆け上がれば、多分間に合う…かも。 だって、この電車逃したら、次は30分後なんだもん!! 絶対乗りたいっ…!! しかし現実は甘くない。 履きなれないローファーからかかとが飛び出して、上手く走れない。 「あっ…!!」 右足がズルッと滑り、ローファーが脱げて階段を転げ落ちて行った。 それと同時に電車は発車する。 「さいあくだ…」 乱れた呼吸を整えてから、ローファーを拾いに階段を下りる。 あいにく、時間はたっぷりあるからね。 2段下りた頃だろうか、毎朝見かける3人組が改札から階段を上り始めた。 もちろん、あの彼も一緒に。 …恥ずかしい。 彼は私のことなんて知らないだろうけど。 明日の朝、『靴落としてたヤツだ』って認識されてしまうのは避けたい。 でも無理。 私はローファーを拾いに行くしかないのだ。 俯いて1段1段下りていくと、タタタッと駆け上がる足音が聞こえた。 そして目の前に差し出されたのは、私のローファー。しかも、両手に乗せられて。 顔を上げると、それは憧れの彼だった。 「落としましたよ、シンデレラ」 そう言って差し出されたローファーは、私の右足の横に置かれた。 段差のせいもあって、ほんとうに王子様が膝をついているかのような錯覚に陥ってしまう。 嬉しさと、恥ずかしさで暑く、真っ赤になった私は、お礼もそこそこにまたホームへと階段を駆け上がって行った。 どうやら私は恋に落ちてしまったらしい。 明日からどんな顔で電車に乗ったらいいんだろう。
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