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『今日は仕事終わったら、友人の店に行く予定。久し振りに会えるの楽しみ』
二週間後、プラムプラムが新たな投稿をした。コメントと共に、バーらしき店の名前と最寄り駅の情報が添えられている。
ほぼ毎日のように郁弥に誘われてジムに通ったが、香世を見かけることはなかった。
珍しくこの日は、郁弥が仕事で遅くなるとかで、豊嗣はジムに誘われてはいない。豊嗣は仕事のノルマを終わらせると、今度こそ香世に会えると、SNSに書かれた店へ向かった。
「「「いらっしゃいませ~」」」
落ち着いた外観とは裏腹に、店内は煌びやかな装飾に溢れていた。
しかし何より驚いたのは、濃いめの化粧と可愛いドレスを着た店員達から、ダミ声が聞こえたことだ。
「あら、お客さん初めてね。レナでーす、よろしく」
「ミリアでーす。やだーお兄さん、可愛い。私、結構好みかも」
「あら、ホント。ミリアちゃんの好みストライクね。あ、私はマリナでーす」
瞬く間にキャスト達に囲まれた豊嗣は、店を間違えたのかと思った。しかし、看板を何度も確認したから、間違えているはずはない。
「あ、あの……僕は……その……ここ、ラブローズですよね」
一縷の望みを掛けて確認する。
「そうよーあら、お客さん、こういう店は初めてなの」
「照れちゃって可愛いー」
豊嗣の質問に、好みだと言ったミリアが身体を寄せる。
「あ、あの……」
どうしたらいいか戸惑っていると、店の奥から、思わぬ助け船が出た。
「おいおい、みんな。からかうのも程々にしなよ」
「え? い、郁弥さん、どうして……」
郁弥だった。
仕事というのはこの店のことかと、一瞬怖くなる。しかし郁弥は、キャスト達と違ってドレス姿ではなく、ごく普通のポロシャツにジーパン姿だ。
それに気付いた豊嗣は、内心で安堵する。
「誰かと思えば、トヨじゃねえか。今日は会えなくて淋しいと思ってたとこだ。うん、今日の俺は、ツいてる。せっかくだ。一緒に飲もうぜ」
そう言って郁弥は、豊嗣と肩を組むようにして、座らせた。
「いくちゃんずるーい。私もトヨくんと、肩組みたーい」
そう言ってミリアが、豊嗣の隣に座り、身体を触りだした。
そこへレナが、水とおしぼりを運んでくる。
「いくちゃん、どうだったの」
「ああ、ちょっと配線が入れ替わってただけだ。金もらう程のこともねえよ」
レナの質問に、郁弥は事も無げに答える。
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