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「ありがとうー助かったわ。じゃあ今日は、うーんとサービスしてあ・げ・る」
そう言ってレナは、郁弥に抱きついた。
「あ、あの……郁弥さん、この店って」
豊嗣が小声で尋ねると、郁弥は呆れた様な表情をした。
「何だ、知らねえで来たのかよ。見ての通りゲイバーだ。あんまりいい言い方じゃねえけど、オカマバーって言う方がわかりやすいか」
「んもーいくちゃんってば。私たちは、オカマじゃなくてドラァグクイーン。他所でオカマなんて言っちゃダメよ」
郁弥の言葉に、レナが頬を膨らませる。
「わかってるよ。けど、ゲイバーつってもいろいろあんだろ。ここは、出会い目的でゲイが来るとこじゃねえからな」
そう言って郁弥は、たとえ本人が自称していたとしても、オカマと言うのは失礼に当たること、ここのキャスト達のように女性装する男性をドラァグクイーンと言うこと、一言でゲイバーと言っても、ここのように女性装の男性が、男女関係なく接客する店と、店員が女装することなく、同性愛者のみを対象とした店があること、そういった店の中にも、異性愛者の男性や女性の入店が禁止の店もあれば、ある程度寛容な店があることなどを教えてくれる。
「それはそうだけどー」
「まあまあ、ママ。いくちゃんもわかってて、トヨくんが理解できるように言っただけなんだから」
なおも頬を膨らませたままのレナを、マリナが宥める。
「じゃあ、筋肉触らせて。それで許してあ・げ・る」
「結局、レナさんが触りたいだけじゃねえかよ」
しなを作って甘えるレナに、郁弥が苦笑する。
この日豊嗣は、ミリアに身体を寄せられながら、禄な話も出来ないながら、郁弥と飲み明かすことになった。
閉店まで店にいたが、香世が現れることは無かった。
翌日、昼過ぎに目を覚ました豊嗣は、二日酔いの頭痛を抱えながら、さすがに何かおかしいと思った。
香世がピザの写真を撮った時、他に人は通らなかった。
豊嗣は、ピザを置いてからずっと見ていたが、写真を撮ったのは香世一人だ。だから、プラムプラムは、香世のはずだ。
プラムプラムの投稿を元に行動すれば、香世に出会えるはずだった。
しかし出会ったのは、郁弥だった。
プラムプラムは郁弥のアカウントだろうかと疑ったが、それにしては、服装やカフェに関する投稿の辻褄が合わない。
服装は、明らかに華奢な女性用のものであった。
カフェやスイーツを好む男性もいるが、昨日郁弥は、店で出されたケーキにはほとんど手を付けず、甘い物は苦手だから、みんなで食べて欲しいと言っていた。
豊嗣は、SNSを元にした行動を諦め、再び香世に付き纏うことにした。
今度こそ、香世の行動パターンを把握し、偶然を装って接近するのだ。
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