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元々郁弥が見に行く予定だったボディビル大会の前日、詳細を伏せて情報を投稿してみた。香世は当然、会場には行っていない。
郁弥は会場で、ボディビルに興味の無さそうな人物を探した。自身を鍛えていなくても、パンフレットを熱心に読み込んでいたり、誰かの連れである人物は除外する。
そうして、開場時刻にやや遅れて入ってきた、細身の男を見つけた。
郁弥は密かに写真を撮影し、香世に見せた。
香世が仕事で会った馬場豊嗣だとわかり、もう少し様子を見ることにした。
次の投稿は、郁弥が会員になっているスポーツジム。投稿した翌日、ジムの前で待ち伏せしていると、案の定、豊嗣が現れた。そこで、タイミングを見計らって声を掛けた。
香世がいないことがわかれば、すぐに帰るかもしれない。それで郁弥は親切を装い、スタッフでもないのに、豊嗣を付きっ切りで指導した。
たとえストーカーだろうが何だろうが、せっかくジムに来たのなら、トレーニングに励み、自分を高めて欲しい。それは郁弥の、偽らざる本心だ。
ゲイバーであるラブローズには、誘導するつもりは無かった。しかし、顧客であるレナを訪ねた際、ミリアに豊嗣の写真を見られ、紹介して欲しいと頼まれた。相手はノンケだと伝えたが、客として来てもらうならいいじゃないと、粘られた。
豊嗣が、素直にゲイバーに誘われるとは思えなかった。そこで香世のSNSに、ゲイバーであることを伏せて、店の情報を投稿したのだ。
さすがに気付かれたのか、再び豊嗣は、香世への付き纏いを始めた。そこで郁弥は、香世に付き纏う豊嗣に声を掛けた。
何とかごまかそうとする豊嗣に、郁弥は善意を装ってトレーニングを勧め、毎日のようにラブローズに連れて行った。
トレーニングに励み、話の上手いキャスト達と話す機会を増やせば、香世のことを忘れるかもしれないと考えたのだ。
今、馬場豊嗣の前には、確かに、薔薇色の未来が広がっている。
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