〈守護者〉

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 火球の破裂に吹き飛ばされたときに、彼は兜をなくしてしまったようで、額も血に染めていました。むき出しになっている顔はまだ若い男性の、いいえ、少年のものでした。  彼は突き刺すような強い眼差しを、まずわたしに向けて、歯を食いしばると、アヌイさんに向き直りました。  アヌイさんはもうボロボロでした。  片足と両腕を亡くし、戦斧と袈裟掛けの傷が深く食い込んだ身体は、今にも裂けてしまいそうでした。それでも少年とわたしの間に立ちふさがろうと、這うようにして移動しています。  それを見たとき、たまらなくなりました。  辺りを見回すと、羽飾りの人が短剣を帯びているのが目に入りました。わたしは立ち上がって走り、短剣を抜くと、アヌイさんの前で構えたのです。  少年の顔が驚きに歪み、すぐに嘲りの色がそれに取って代わりました。 「おまえはバカか」少年は言いました。「そんなものほっといて、逃げろよ。そいつはお前を守るためだけに、命を吹き込まれたデクだろう」 「たとえこの人が死人でも」わたしは言い返しました。 「わたしのために、こんなにも戦ってくれた人を、見捨てるわけにはいかない」 「……っ」  あざ笑われたのだと、わたしは思いました。  けれど少年は何かに耐えるかのように、歯を食いしばり、目を閉じて、身体を震わせました。 「ふざけるな……」彼の声は聞き取れないほどに微かでした。「……ふざけるな」  信じられないことに、彼は涙を流して、そう言ったのです。 「ふざけるなあっ!」  怒声を放って、彼は飛びかかり、応戦しようとしたわたしは、けれどアヌイさんに押しのけられてしまいました。アヌイさんが振り回す二の腕をかいくぐった少年は、鋭い突きをアヌイさんの胸に入れました。  パキン。  何かが砕けるような音がして、アヌイさんの動きが静止しました。  少年兵の突きはリアさんが埋め込んだ、あの石を正確に砕いていたのです。  素早く身を引いて、頽れたアヌイさんの巨躯に押しつぶされることをさけた少年兵は、わたしに向き直りました。  もう一度、今度は自分のために剣を構えて、わたしは彼に対峙しました。  何かとてつもない苦痛に耐えているかのような目をして、彼は剣を構えました。そのとき。 「お取り込みのところ、申し訳ないんだけど、時間切れだよ」
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