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「そんなくだらないことが理由だなんて、言われるくらいなら、素直に金って言われたほうがマシじゃない?」
「――リアさん」
「なに?」
「わたしは後どれくらい――」生きられる、と言いそうになって、「で死体に戻ってしまうんですか?」
黙って、リアさんはわたしを見つめました。
「リアさん」
「……二年。もってそのくらい」
「そうなんだ」
「内側の環の恵みを無制限に引き出せる〈電池〉は問題ないけど、身体がね、おそらくそれ以上は持たない」
「あの」
わたしはリウロくんを振り向きました。彼は苦い表情で、わたしを睨みつけていました。
「なんだ」
「……ごめんなさい。この身体はまだ返せません。わたしは……。王様に会ってみたい」
「なんだと」
「解っています。でも、この国を見てください」周囲の荒涼とした風景を、わたしは見回しました。
「こんな貧しい……。だからもし王様がこの国を何とかするために、この国で暮らす人のために何かしようとすると言うのなら、手伝ってあげたいと思うんです。もちろん〈掟〉の範囲内で。ですからこの身体借りておきます。長くても二年です。でも必ず返すとも言えません。だから、ごめんなさい」
「……さっきも言ったが、おまえバカだな」
「そうですね」
「ああ。それに姫様とは少しも似てない」
「え? それは――」
「どうでもいい、勝手にしろ。だけど、これだけは言っておく。その身体は姫様のものだ。マグ王がその身体を傷つけたり、〈掟〉に反することを強要するなら、俺はその身体を取り返しに行く。必ずだ。覚えておけ」
「もう少し素直な言い方をした方がいいんじゃないの、少年」
「うるさい」
「リアさん、わたしを王のところへ連れて行ってくれますか」
「そうしないと、あたしも残りの〈ギャラ〉がもらえないんでね」
「ギャ……なんです?」
「天使語、天使語。じゃあ行こうか」
「はい」
「待て」リウロくんでした。わたしは振り向きました。
「さっき言ったことは本当だからな」
「……ありがとう」
「じゃあ少年。あとは頼んだ」
「お前に、頼まれる筋合いなんかない!」
こうして多くの人の亡骸が転がる平野を、わたしはリアさんと後にしたのです。
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