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目を背けて、リアさんに続きます。リアさんの唇も、ほんの少しだけ歪んでいました。
広間に入ると、プクさんそっくりの格好をして、似たような顔立ちの人たちが、大勢目に入りました。
見えるだけで百人くらいはいたと思います。広間にいくつも投げ出された毛皮の上に、数人で固まって、小さな器でお茶を飲んだり、甲高い早口でおしゃべりをしたりしています。歌うような呪文のような言葉は、わたしが知らないものでした。
脇を通っても、わたしたちに視線を向けたりは決してしませんが、背中を向けた途端、粘りつくような視線が追いかけてくるようです。
そして広場の中央には、櫓のようなものがそびえていました。漆黒の輝きを放っていて、材質はなんだか見当も付きません。高さはわたしが手を伸ばせば届くくらい、わたしたちの方に向けて短い階段が下っています。
その手前に、わたしたちは案内されたのです。
櫓の上は欄干に囲まれた方形の空間で、小さな卓と大きな椅子が置かれていました。
いずれも、金銀宝玉が象限に埋め込まれた、とんでもないくらいに豪華なものでした。教えてもらわなくても、それが玉座だと判るほどに。
わたしは、そこに腰掛けた男の人を見つめました。
つまりマグ王を。
彼の小さな手足や、ツルンとした顔立ちは、小さな子供を思わせました。大きすぎる玉座に座っていると、幼い少年がごっこ遊びに興じているようにも見えます。なのに浮かべている表情や、纏っている雰囲気は違いました。それは老人のもの、生に倦疲れた老人のものでした。
産まれたときから百歳だった子供、わたしの目にはそんなふうに見えました。
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