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「お望みの、〈守護者〉を連れてきたよ」
リアさんがそう声を掛けても、返事どころか、王はこちらを見ようともしませんでした。それどころか彼は倦んだような眼差しを宙に据えたまま、髪の毛一筋動かさなかった。
代わりに動いたのはプクさんです。
その後に起きたことを簡単に説明するとこうなります。
さっきリアさんが言ったようなにプクさんは三人います。わたしたちの前にいるのが一号さんで、櫓の登り口に二号さん、三号さんは下り口です。
リアさんの言葉は一号さん、二号さん、三号さんの順で伝言され、最後に、三号さんがそっぽを向いたままの王にリアさんの言葉を囁くのです。
それに対して、やっぱりそっぽを向いたまま王が何事かをボソボソ言い、それから今度は三、二、一号の順で伝言が送られて、最後にプク一号さんが甲高い声を、リアさんに向かって張り上げました。
「お言葉である。なにゆえ、朕に対する臣下の礼を取らぬとの仰せである」
盛大にため息を吐いてからリアさんは、「あくまでも、あたしは天使語で言う〈ビジネス・パートナー〉であって、あんたの臣下じゃない、と伝えてちょーだい」
そうしてまた、一、二、三号です。
「はあ」見てるだけで、わたしはため息が出ました。「下賤の者が王と直接口を利くのは畏れ多い、みたいなことですか?」
「たぶんね。知りたくもないから、尋ねてないけど」
うなずいたわたしが、顔を玉座に向けたのは鈴の音が聞こえたからです。見上げると、王が小さな金の鈴を振り終えたところでした。
三号さんが伝言を中断して、飛んでいきました。そうして手慰みにする玉を 鈴の隣から取り上げて、王に手渡しました。
「自分で取ればいいのに……」
「あの王様は自分じゃ何もしないから」わたしのつぶやきはリアさんにも聞こえたようです。
「玉座から降りるのも一々人の手を借りるんだよ。脚でも悪いのかと思ったけど、そういうわけじゃないのね。ほんと何考えてンだか」
「どうしてなんでしょう?」
「この世界で唯一絶対の、えら~い王様だからみたいだよ」
「ほんとに?」
「んなわきゃない。けど、この宮廷に集ってる連中はそう信じてるか、信じてるふりをずっとしてきたんでしょ」
「……」
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