カラン、コロン、コロロロロン

3/5
前へ
/5ページ
次へ
店の人には、見つかったら連絡をくれると話をもらって、店をあとにした。 不幸なことに、雨が降ってきて、地面を濡らす。こんな漫画みたいなことある?? あの結婚指輪、気に入ってたのに……。 というか、旦那には何て言うの? めちゃくちゃ怒るかなぁ……。 もうやだ……。 雨に濡れながら、30分同じところを探したけど、結局見つからなかった。 電車に揺られて、最寄りの手前で降りる。2年前におじいちゃんが亡くなって、空き家になっている家があった。 とにかく、放心状態で、一人になりたくて、落ち着きたくて。 誰もいないおじいちゃんの家に寄った。 今は叔父の家だけど、彼は、今仕事で北海道にいる。つい2週間前まで私が旦那と住んでいたのだが、事情によって引っ越すことになった。でも、鍵はそのまま持ってるし、私と旦那が住むには広すぎた家は、まだ片付け終わっていない。 ソファに腰を掛けて、冷静にさっき起こったことを整理した。 でも、ここにないのは事実だ。 これは旦那にはちゃんと話さないといけない。 怒られると思う。めちゃくちゃ言われると思う。 でも、あの結婚指輪はもうここになくて……。 ずっと、おじいちゃんの家にいるわけにもいかないから、一時間して、私はいよいよ帰った。 「──本当にごめん」 「まあ、仕方ない」 彼は、私を責めなかった。 「じゃあ、次の休みが被ったら、買い直しにいこう」 その優しい声に、涙がどんどん溢れてくる。 なんてことをしてしまったんだろう。 そんな気持ちでいっぱいになった。 あの指輪は、旦那が欲しいと言ったデザインの指輪と違った。彼は、私が欲しいものをと、譲ってくれたのだ。 そして、結婚式に緊張して手を震わせながら交換した。 たった半年も経ってないのに、思い出がちゃんとある指輪だった。 買い直して、たとえ同じものを購入できたとしても、それは全く別のもので。同じ形をしていても、重さは違う。 「おい、泣くなよ……」 彼は、抱き締めて、私を宥めてくれた。 「だってぇ……」 あんなに号泣をしたのは、本当に久しぶりだったと思う。不注意で失くしてしまったことが堪らなく不甲斐なく、情けなかった。胸が痛くて痛くて、どんな形になっててもいい。錆びていても良いから、指輪が戻ってくるように願った。 2週間経っても、結局見つからなかった。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加