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店の人には、見つかったら連絡をくれると話をもらって、店をあとにした。
不幸なことに、雨が降ってきて、地面を濡らす。こんな漫画みたいなことある??
あの結婚指輪、気に入ってたのに……。
というか、旦那には何て言うの?
めちゃくちゃ怒るかなぁ……。
もうやだ……。
雨に濡れながら、30分同じところを探したけど、結局見つからなかった。
電車に揺られて、最寄りの手前で降りる。2年前におじいちゃんが亡くなって、空き家になっている家があった。
とにかく、放心状態で、一人になりたくて、落ち着きたくて。
誰もいないおじいちゃんの家に寄った。
今は叔父の家だけど、彼は、今仕事で北海道にいる。つい2週間前まで私が旦那と住んでいたのだが、事情によって引っ越すことになった。でも、鍵はそのまま持ってるし、私と旦那が住むには広すぎた家は、まだ片付け終わっていない。
ソファに腰を掛けて、冷静にさっき起こったことを整理した。
でも、ここにないのは事実だ。
これは旦那にはちゃんと話さないといけない。
怒られると思う。めちゃくちゃ言われると思う。
でも、あの結婚指輪はもうここになくて……。
ずっと、おじいちゃんの家にいるわけにもいかないから、一時間して、私はいよいよ帰った。
「──本当にごめん」
「まあ、仕方ない」
彼は、私を責めなかった。
「じゃあ、次の休みが被ったら、買い直しにいこう」
その優しい声に、涙がどんどん溢れてくる。
なんてことをしてしまったんだろう。
そんな気持ちでいっぱいになった。
あの指輪は、旦那が欲しいと言ったデザインの指輪と違った。彼は、私が欲しいものをと、譲ってくれたのだ。
そして、結婚式に緊張して手を震わせながら交換した。
たった半年も経ってないのに、思い出がちゃんとある指輪だった。
買い直して、たとえ同じものを購入できたとしても、それは全く別のもので。同じ形をしていても、重さは違う。
「おい、泣くなよ……」
彼は、抱き締めて、私を宥めてくれた。
「だってぇ……」
あんなに号泣をしたのは、本当に久しぶりだったと思う。不注意で失くしてしまったことが堪らなく不甲斐なく、情けなかった。胸が痛くて痛くて、どんな形になっててもいい。錆びていても良いから、指輪が戻ってくるように願った。
2週間経っても、結局見つからなかった。
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