第2章:3 夢と現Ⅱ

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(自分にできることを、精一杯しよう)  今までと、同じ。役割があって、それが何かに通じているのなら、役立つのならばそれでいい。  彼女は震えが来るほどの恐れと不安をやり過ごす。奈落の底で立ち上がり、ゆっくりと這い上がる。  周りの者の顔色を窺い、機嫌を損ねないように立ち居振る舞うことには慣れている。住まう場所が変わるだけで、これからも自分の隷属的な立場はずっと変わらない。 (これが、私の役目)  彼女は決して、無意味にこの世に生まれたとは考えない。自分がここに在ることには意味がある。それが世界にとって、取るに足らぬほどのささやかな働きであっても構わない。与えられた境遇の中に自分が役に立てる場面があるのなら。  誰かの、何かの助けになれるのなら。  誰に罵られても、貶められても、思いだけは前を向いて胸をはって生きていられる。  それだけで幸せを感じることが出来る。不幸だとは思わない。  どこに嫁ごうとも揺るがない。変わらない。  自分が在る事の意味は、これからは滄国(そうこく)の第三太子が与えてくれるのだ。
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