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嫌すぎると胸の内で不平を呟きながら、朱里は再び「はぁ」と溜息をついた。
(どうして、私がこんなに頭を悩ませなきゃならないの)
事の発端を辿っていくと、恐れを上回る勢いで苛立ちが込み上げてきた。いったい誰がそんなことを言い出したのかと頭を抱えたくなる。
「ああー、嫌だ。やだやだ」
声に出すと、更に暗い気落ちに拍車がかかる。
朱里は人一倍怖がりであることを自覚している。学院の規則を破ってまで、恐ろしい計画を企てる同級生達の神経が信じられなかった。
そして朱里は、運悪く学級委員であり、同時に学院の理事長の娘だった。
「ありえない」
朱里は反対を訴え続けていたのだ。それでも学級内で盛り上がった計画は留まることを知らない。好奇心の塊と化した友人達を必死で諌め続けたが、徒労に終わった。
自分は絶対に参加しないと腹をくくっていたが、学級委員という肩書きから生まれる責任感なのか、単に友人達を案じてしまうのか、放っておけないのも事実だった。
(こんな自分が嫌だ)
朱里の気分はどこまでも重い。
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