プロローグ:2 瞳

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「だけど、私は朱里が彼氏を作るのは反対。朱里にはね、運命的な出会いをしてほしいのよ」  うっとりと、麟華は目を輝かせている。 「麟華、お願いだから、良い年をして恥ずかしいことを堂々と言わないで」 「全然、恥ずかしくないわよ」  麟華の突き抜けた調子は、早朝でも損なわれることがない。  変わらず朗らかで、明るくて元気だった。朝が弱い朱里には驚異的なくらいだ。 「あー、寝不足でだるい」  目をこする妹をきょとんと見つめてから、麟華は首を傾げる。 「どうしたの?」 「くだらないことを考えていたら、眠れなかっただけ」  姉の麟華は朱里の通う学院の高等部で、美術の教師をやっているのだ。そんな麟華に、まさか学級内の企てを話すわけにもいかない。  朱里は寝不足の理由を適当につけて、リビングの大きなソファに沈み込んだ。 「麒一(きいち)ちゃんは?」  姿の見えない兄の所在を尋ねると、麟華からは予想通りの返答があった。 「もう大学へ行ったわよ」  麟華の双子の兄である麒一。
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