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「……これでいいのかも」
手紙はいつか破れ、文字すら消えて、本当に読めなくなる。
なら、今無くなったところで早いか遅いかの違い。
私の片思いはここで終わる。
翌日。
私は机に突っ伏していた。
その様子に依里が声を掛けてきたため話したら「初恋なんてそんなもんだよ。元気だしなって」と言ってくれる。
依里の明るい性格はいつも私を前向きにさせてくれたけど、今日ばかりはそうもいかなそうだ。
かと言って心配をかけたくなくて、そうだよねと普段通りに振る舞う。
つい癖で手帳を開いて確認してしまうが、そこに手紙はない。
「今日は用事があるから先帰るね」
下校時間、私は依里にそれだけ伝えると昨日のファミレスへと向かった。
もう手遅れなのはわかってるけど、それでも確かめずにはいられない。
外からお店の中を見ると、昨日の席が空いていたため、私はその席に座り注文を済ませた。
料理が運ばれてくる前に床や椅子などを確認するが、やはりどこにもない。
やっぱり処分されたんだと思い、運ばれてきた料理に手を付けずにいると、知ってる声が聞こえ顔を上げる。
すると何故か私の前に依里が座っていた。
「なんで……」
「あんたとは幼馴染なんだから、考えてることくらいわかるって」
流石幼馴染というべきか、何でもお見通しのようだ。
食事を済ませた帰り道、依里が公園のベンチに私を誘う。
本当は直ぐにでも帰りたい気分だったけど、強引に座らされてしまった。
二人の間に沈黙が流れる。
依里とこんな空気になったのは初めてかもしれない。
いつも依里は、どんなときも明るかったから。
私のせいで依里まで暗い気持ちにさせてはいけないと思い、私は明るく振る舞う。
「あはは、やっぱ処分されちゃったかな。まあ、所詮初恋だしね。次の恋を探し――」
話している途中、私は瞳に飛び込んできた物に続きの言葉を言えなくなった。
依里が今私に見せているのは間違いなくあの手紙。
でも、何で依里が持ってるのか、何で拾ったなら教えてくれなかったのとか、わからない感情が私の中で渦巻く。
そんな私が発した言葉は「なんで」だった。
「ごめん。昨日この手紙が落ちたことに気づいて拾ってた」
「待って……え? わかんない。なんで……拾ってたなら教えてくれればよかったじゃん」
私の大切な手紙、それは依里だって知ってるのになんでこんなことをするのかわからない。
悲しい気持ちに怒り、感情がわからない。
なのに、なんで依里が辛そうな顔をするのかわからない。
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