7人が本棚に入れています
本棚に追加
それから、姉の英語力は恐ろしいスピードで上達していった。
数々の英単語を吸収して、細かい文法をばっちり覚えて、いつのまにやら発音もスラスラになっていた。
真夜中のリビングで、アメリカのコメディドラマを字幕なしで観ているところに出くわしてしまったときは、なんというか大変気味が悪かった。
無闇に関わらないでおこう。そう思い始めたころ、あちらからアピールをしてきた。
「ねえねえ。なんで急に英語の勉強始めたか知りたくない?」
……面倒くさい。という言葉を飲み込み、「知りたい!」という百点満点の素直な返事をした。
「私、イギリス人の彼氏ができたの!すごくない?」
「は?」
「ウィリアムっていうんだけど、めちゃくちゃ格好いいの!あーあ、早く会いに行きたいな。オンラインで知り合ったの」
「いや、えっと」
「みてみて、これがウィリアム。休みの日にはテニスとガーデニングしてるんだって」
満面の笑みで見せてくれたスマホには、爽やかに歯を見せて笑うウィリアムの写真があった。細いフレームのメガネがインテリっぽい印象を与えている。
知らないはずなのに既視感。そうだ、フリー素材とかである顔だ。
「騙されてんじゃない?多分、お金とか取るつもりだよ」
かわいい妹の皮を脱ぎ捨て、本音のままに感想を伝えた。
「そんなことないって。絶対に!」
「あと少ししたら、お金催促されると思うよ」
「じゃあ、賭けようよ。ウィリアムは絶対にそんなことしないから」
直接会ったことのないウィリアムに、どうしてそこまでの信頼を置けるのだろうか。
最初のコメントを投稿しよう!