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「素敵な彼氏と東京Dランドで1泊したいな……」
何でもない昼下がりの学生食堂で、八夜子(ややこ)さんがため息をつく。
「あの。僕は素敵じゃないけれども彼氏じゃないですか、八夜子さん」
磨いて光り輝き過ぎたダイヤモンド、それが八夜子さんに対する大学の仲間内の評価だった。
怜悧な眼差し、透き通る肌、触れたくなる艶やかな黒髪、魅惑的な唇、穏やかな物腰、スタイリッシュな立ち姿……そこいらの飢えたオスには近づきがたいオーラを放っている。
だがそれが災いしたのか、彼女の恋人は皆去っていった。
僕のように平平凡凡とした男が八夜子さんとお付き合いできたのは、彼女がフラれる度に慰め続け、癒し系をアピールした結果、まさかの棚からぼた餅であった。
「拓也くんはいい人だね。気配りも上手だし」
彼女は見た目通り芯の強い、それでいて控えめな女の子で、別れた男たちがどこを気に入らなかったのか、僕には分からない。
「私、拓也くんとなら上手くやっていける気がする」
嫉妬の視線なんてどうでもいい。付き合い始めて一か月、僕の毎日は舞い上がる蝶のようだった。
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