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深夜12時。12月24日を生きながらえ、神に感謝した。クリスマスになったが、敵の動きに変化はない。
僕は煙草を思い出し、クリスマスに感謝しながら、早速火をつける。
壁にもたれ一服していると、耳に微かな声が届いて、僕は慌て、身を低くして塹壕の外に銃身を向けた。
ドイツ軍の塹壕まで横たわる中立地帯には、闇が大きく口を開いている。漆黒で塗りつぶされた視界の先には、敵と味方の屍が累々と横たわっているはずだ。
しかし。
聞こえる。
歌声が。
「Stille Nacht, heilige Nacht,……」
歌詞はドイツ語だったが、馴染みのある『Silent night』だ。故郷で歌うはずだったメロディーを、僕たちも小さな声で口ずさんだ。
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