第57話 明日、消えるかもしれないこの光を  (テーマ『クリスマス』)

4/7
前へ
/73ページ
次へ
 事態が飲み込めたのは、空が白み始めてからだった。  数名のドイツ兵が、こちらへ歩いてくるではないか!  手には銃の代わりに、ラム酒の瓶が握られている。 「メリー・クリスマス!」  僕たちの何人かが、恐る恐る塹壕の外に出て、ドイツ兵に握手を求める。他のドイツ兵も塹壕から顔を出し、僕たちに手を振った。双方の上官は名刺を交わし、戦場はパーティーのような賑わいとなった。  クリスマスを祝おう、一日限りの休戦だ。  この奇妙な成り行きを、誰も拒むものはなかった。
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加