第57話 明日、消えるかもしれないこの光を  (テーマ『クリスマス』)

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「やあ」、僕がドイツ兵にカップを差し出すと、ラム酒を注ぐ。お礼に僕が煙草を2本渡すと、ドイツ兵が集まりだし煙草の減った代わりに、僕のポケットは子供みたいにお菓子で一杯になった。  不思議な感覚だ。僕たちは昨日まで殺し合っていたというのに。  ラム酒は喉を通り僕のかじかんだ心を温かくした。 「君、年は幾つ?」、流暢な英語のドイツ兵はイギリスで暮らした事があるという。 「18です」、世間話をしながらお互い家族の写真を見せ合い、肩を抱き聖歌を歌った。皆、友達のように気さくな奴らばかりだった。  午後からは戦死した仲間を手厚く葬った。  このわずかな中立地帯を奪い合い、僕たちが殺したドイツ兵がいて、彼らに殺されたイギリス兵もいる。  時計の針は戻らない。なかったことにはならないんだ。 「見ろよ」、隣で作業していたドイツ兵が僕の肩を叩く。  驚いた。  荒野の夕暮れにたくさんの鳥が羽ばたいていた。穏やかなこの日を待っていたのか。  だが、日没とともに僕たちはまた敵同士だ。  彼の顔に憎しみはない。  ただ悲しそうだった。  こんな風に戦場で出会うべきじゃなかった、と。
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