第58話 徒歩5分のパントマイム (テーマ『五分間』)

6/7
前へ
/73ページ
次へ
 並木道にイルミネーションが灯る冬。 「これ」、葉山さんの家で行われたクリスマス会で、彼女が一番にマシュマロのお菓子をくれたので、ぼくはひどく浮かれていた。  けれど、その喜びはすぐに消えた。  他の男子も、そして女子にも。優しい葉山さんは、分け隔てなくマシュマロを配っているではないか!  ぼ、ぼくは、特別じゃないのか……。  現実を突きつけられ、ぼくはうなだれた。  しかも、二人きりになった廊下で彼女が言う。 「真野君、私、今度からエミちゃんと学校に行こうと思うの……」  ぼくは思いやりが足りなかった。  毎日いて、気付けなかった。  ぼくなんかよりも、葉山さんの方がもっと不安だったんだ。見知らぬ土地に引っ越して、知らない人間ばかりの街で、一人ぼっちで……。  葉山さんは、友達が欲しかったんだ。  それはぼくの欲しい「好き」じゃなかった……。
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加