第58話 徒歩5分のパントマイム (テーマ『五分間』)

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 けれどぼくは笑ったよ。  葉山さんが幸せなら、僕も幸せだ。  我ながら、満点の笑顔だったろう。  5分間のパントマイムが、こんなにもぼくを強くしたんだ。それは嘘偽りなく葉山さんのおかげだった。  ぼくは彼女に握手を求める。  葉山さん。  僕の胸から恋の棘が落ちた。  そう思ったときだ。  葉山さんの温かい両手が、ふわりとぼくの手を包む。  廊下の淡いライトが、白い輪郭を天使のように照らす中、上気した頬が赤く染まり、葉山さんをいつもより大人びて見せた。  ゴメンナサイも、アリガトウの言葉もない代わりに、葉山さんの温度が、ぼくの冷たい手に伝わった。  一緒に過ごした時間に、真新しい女の子の感情が上乗せされていく。  そんな大それた想像はしたことがないので、ぼくが金魚みたいに口をパクパクさせていると、彼女は恥ずかしそうに廊下の奥に消えてしまった。  その帰り道、嬉しすぎて、最速の新記録を出したんじゃないだろうか?  徒歩5分から、遠のいた彼女の背中。  けれど心の距離は0に近づいた、今なら言える。  ありったけの気持ちを込めた独り言の台詞を。 「……ぼくは、君が大好きだ!」    <了>
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