永遠の黄昏の中で

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「大気がね、上手く循環すると、昼の面と夜の面の温度差もかなり縮まるらしいの。もちろん、それでもかなりの温度差は残るんだけど……そういう状態だと、惑星の一部に適温の環境が生まれるらしいわ」  海が夕日を呑み込んでいく。  二人の時間がもうすぐ終わろうとしていた。 「惑星の一部?」 「そう、一部。具体的には、。昼の面と夜の面の、ちょうど中間地点くらいに、ずっと夕方みたいな状態が続いている領域があって、そこでなら生物は生きていけるんじゃないかって言われてるらしいの」 「……昼と夜の間、か」 「うん。永遠の黄昏時が続く世界なんだって。もしかするとそれは、今私達が見ているような場所かもしれないわね」  太陽はいよいよ僅かな光だけを残して、海中に没しようとしている。  全ての物が輪郭を失い、私も彼も、波打ち際の全てが影法師のように溶け合っていく。  不確かさが支配する世界の中で、私はただ一つ確かな彼のぬくもりを感じながら、「この黄昏が永遠に続けばいいのに」と、心の中でそっと願った。 (了)
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