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永遠の黄昏の中で
「前に観たテレビでさ、こんな話があったんだよ」
黄昏時が近付く波打ち際で、彼が不意にそんな呟きを漏らした。
「どこか遠くの惑星では、公転と自転の周期が同じになってて、恒星にずっと同じ側を向け続けてるんだってよ」
「……潮汐ロックね。月がいつも地球に対して、同じ面しか見せないのと同じ仕組み」
「そう、それ! ――それでな、その惑星では恒星を向いてる側が常に昼、反対側が夜になるんだってよ!」
そう言いながら、彼はいつの間にか拾っていたらしい石ころを、海に向かって水平に投げつけた。
どうやら水切りをしたかったようだけど、石は最初の一跳ねもせずに波間へと消えていった。
「あちゃぁ~、俺の腕もなまったな……」
オレンジ色に照らされた世界の中で、ばつの悪そうな笑顔を浮かべる彼。
まるで小学生のように無邪気なその表情に、以前とは違う感情を抱きながら、私はそれを悟られないように話の続きを促す。
「……それで? その惑星の話がどうかしたの?」
「ああ、そかそか。いや……なんかさ、その惑星ってまるで俺達みたいだなって」
「私達……みたい?」
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