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Ending
「本当に行くんだな。君を手放すのが惜しいよ」
「俺がお前のものだったことはないけどな」
空港まで楓の車で送り届けてもらった。
楓が車からスーツケースを取り出して、助手席のドアを開け俺をエスコートする。
「気を付けてくれ。海外でも男たちは君を手に入れようとするはずだ」
「わかってる」
「あと、君にプレゼントがある。驚かせたいから目を瞑ってくれ」
「ああ」
楓に引き寄せられてキスをされた。
そこから楓のさわやかなエネルギーが流れてくる。
「おい」
「君にはもう必要ないかもしれないが、無事に向こうに着く様に念を込めた」
「彼によろしく」そう言って楓は帰っていく。
ダニエルがアイルランドに帰ってから2年半。
大学の卒業と共に俺も日本を離れる。
俺はダニエルと話し合って、在学中に力のコントロールをできる様になって卒業したらダニエルの元へ行くと決めたのだ。
俺に離れても守れと言われたダニエルは水を得た魚の様にはりきった。
家の各部屋にカメラを設置して常に俺の安全を見張っている。
衛星から俺の位置も常にわかるらしくて、いつも行かない所へ俺が行くとアラームでダニエルに知らせる様だ。
日常も俺にカメラを付ける案もあったけれど、それは俺が盗撮で捕まる可能性があるため諦めた。
その代わりに俺の腕時計は心拍数や体温の情報が常にダニエルに送られる機能があって、異常があればすぐわかるものらしい。
これは邪魔にもならないし、変な男に絡まれた時には警報を鳴らせる機能もあるから割と便利だった。
大学の女の子たちも在学中ずっと俺たちに協力的でダニエルと連携して守ろうとしてくれたのには本当に感謝している。
俺たちのこういった生活に楓は呆れていたけれど、実際このお陰で俺は5人不法侵入やら悪質なストーカーを警察へ突き出せたから大袈裟でもなかった様だ。
ダニエルに2年半全く会っていなかったかといえばそうではない。
年に1度はバケーションを使ってこちらへ来てくれた。
俺の両親にも俺たちのことを2人で伝えた。
彼氏を連れてきた事も、相手がアイルランド人なのもすべてに驚いていたけれど、俺が幸せならと認めてくれた。
以前の俺とはまるで変わって今の方が生き生きしていると母は嬉し泣きした。
そしてダニエルから指輪が贈られた。
デートだと連れ出された教会の前で跪いて。
長いフライトを終えてもうすぐ飛行機が到着する。
俺は指に光る指輪を眺めて俺たちの出会いからを振り返っていた。
思えば恋人になることも体を繋げたのも、すべて俺からの申し出だったなと思うと笑ってしまう。
未だに俺の斜め後ろを歩くダニエル。
それはきっとこれからも変わらないだろう。
今世でも俺たちは守る者と守られる者というだけの関係だったかもしれない。
だがあいつを愛してしまった俺はそんなぬるい関係では満足できない。
ずっと俺を見て、俺のわがままを聞いて、愛を囁き続けるべきだ。
もちろんダニエルはその通りしてくれるだろう。
何せあいつは俺を守り続けると魂に刻まれた守護騎士(knight)であり、俺に永遠の愛を誓った恋人でもあるのだから。
END
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