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アイリッシュ
あの後俺の手を離さず、鼻水をダラダラ垂らしながら「ゔ…ゔぅ」と手に口付けたまま泣き始めるものだから、気持ち悪くなって無理矢理近くのファミレスまで引きずってきた。
今俺たちは向かい合わせに座っていて、こいつが落ち着くのを待っている。
それにしても、予測はしていたけどこいつの背後の連中はすごいのが揃ってる。
幼い頃はそれが何かわからなくて、人は皆んな2人以上で行動するものだと思っていた。
ある程度成長すると彼らは守護霊なんだってことが、夏場のホラー特番なんかの情報で知ることになった。
こいつの後ろにはそれぞれ強い力を持った神職の人間が3人もついてる。
そんな奴を俺見たことがない。
守護の力であれば侍だろうがなんでも問題ない。
ただ、こいつ自身の清らかさと後ろの奴らの力が共鳴して無意識に周囲を浄化していっている。
そもそも守護霊との相性も良いんだと思う。
「落ち着いたか?」
「…はい」
今までずっと俺の背後にいたくせに、今度はおずおずと目線を左右に泳がせてみたりする。
まだ逃げ出すんじゃないか心配だ。
「逃げるなよ」
「にげません。しずくがまえにいるときんちょうします」
「お前名前は?」
「ダニエルです…ダニーってよんでください」
…呼び方なんて別にどうでもいい
「どこの国からきたんだ?」
「アイルランドです」
「お前俺が好きなんだろ?いつ俺のことを知った?」
そう言われてまた顔が赤くなった。さっき自分でも言ってたくせに
「2ねんまえオーストラリアでしずくをみました」
2年前確かに高校の夏休みを利用してオースのメルボルンにホームステイした。
無気力な俺に親からの提案だった。
案外海外の霊は何を言ってるかわからなくて気楽だった様に思う。
こいつが言うにはその時俺が参加したグレートバリアリーフへ行くツアーにこいつも一緒にいたらしい。
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