小話1 レオンハルト、異世界転位する

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「きっと感涙にむせぶだろうな。 これはオレみたいな報われない者に夢を与える素晴らしい仕事だよ。」 「僕だったら即日親子の縁を切るね。」 「はぁ、夢のない奴だ。」 「チラ裏の妄想を夢とは呼びたくないね。」 まー見れば見る程に酷い内容だ。 ブサデブだったけど転生してチート能力で無双したり虐められてたけど異世界で強くなって元の世界に戻って虐めてた奴らに復讐したり、 異世界に飛ばされたら特殊能力に目覚めて無双したり無双したり無双したり。 馬鹿の一つ覚えみたいに人から貰った力で無双してるなこいつら。 無双してハーレム作らんと死ぬのか? 「まさかこんなの本気にしてないですよね?」 「折り返してるページ見てみ、オレの境遇にかなり似てないか?」 「………………………」 前の人生では絶望的に運がなくて悲惨な毎日だったけど転生して幸運値をカンストにしてもらったら異世界の覇者になりました。 頭悪い、絶対頭悪インジャー。 「良いよな、転生憧れるよな。 転生したらイケメンになれるしチート能力貰えて無双出来るしハーレムも作れるし。」 「こんなのが僕の師匠とか情けなくて涙が出て来る。 かつての強敵達も草葉の陰で泣いてるよ。」 「お前最近オレに対する当たり強くないか? 反抗期か?」 「気にするな、殺し合った仲じゃないか(詳細は小話2か3)」 読まないなら返せと、レオンさん(ゴミカス野郎)は僕の手から雑誌を取り上げる。 「ただなぁ、転生だと一回死ななきゃならんのがな。 異世界転位だと顔が変わらんし、悩み所だな。」 「応、死にたくなったら言えよ。 弟子として介錯してやるからな。 何なら今からでも良いぞ。」 レオンさんは異世界(笑)に転生し僕は《疾風》の名前と財産とコネクションを引き継ぐ。 どっちもwin-winのハッピーエンドじゃないか是非ともそうしよう今夜辺りにまた寝首を掻きに行くか。 「ま、お前もいつか理解出来る日が来るさ。 人間誰しも異世界転生して無双ハーレム生活を送りたいと思うものなんだよ。」 「前世で何も為せなかった奴が次の人生で何か出来るとは思わないけどね。 人間は血と汗に塗れて足掻いてこそってアンタから教わったはずなのにどうしてこうなった。」 こいつやってる事と言ってる事が無茶苦茶なんだよな。 業績で言えばもう全世界ぶっちぎり一位のはずなのに、このクソを煮詰めたような人間性のせいでイマイチ尊敬出来ない。 どっかの泉に落としたら身も心も綺麗なレオンさんが出て来ないだろうか。 いや、身だけは元々綺麗かこいつ童貞だし。
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