小話1 レオンハルト、異世界転位する

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「誰だよそんな前時代的な事を教えてる頭悪い奴は? 師匠か?どうせ師匠だろ? あいつ最高の指導者とか言われてるけど、結局最後は根性論だからな。 考え方がもう人生3週くらい遅れてるよ、でも老人だからね仕方ないね。」 「よりにもよってアンタが根性論を否定するのか。」 「あんなもの馬鹿の理論ですよ。 私はもっと賢くスマートに生きるのです。」 「そうか、馬鹿で良かったな。」 馬鹿は死ななきゃ治らないって言われてるけど、この人見てたら本当にそう思うわ。 レオンさんと話しているとこっちの精神が疲れるので、自分の作業(押し付けられた仕事)に戻る。 あっちも夢を与える雑誌に夢中のようで、ハイカロリーなスナック菓子を頬張りながら寝転がる。 とてもではないが龍王祭完全勝利の立役者とは思えない。 ONとOFFの切り替えが出来ていると言えば聞こえは良いが、それにしたってだらけ過ぎではなかろうか? 「あー、異世界行きたいなー。 強くてニューゲームしてぇなぁー。」 そう、思えばそれが何かのトリガーだったのだろう。 次の瞬間レオンさんに訪れるそれの。 「はいはい、寝ればワンチャン夢の中で──────って、レオンさん光ってますよ?」 そう、それはまるで何千の蛍が飛び立ったかのように。 レオンさんの体から光の粒子が上り、誰か遠くへ行ってしまう人を送るような幻想的な光景を作り出す。 「何を今更、昔からオレの人間性はピッカピカですよ光り輝いてますよ。 今になって気付くとかお前人を見る目ないんじゃね?」 「違ぇよ、体が光ってるって言ってんの。」 「体が? オレまだふさふさ──────って、マジやん。」 こいつの目は深海魚よりも劣っているのだろうか。 僕に指摘されて初めて自分が光の粒子に包まれている事に気付き、何事かと全身を見回す。 よくよく見ると、段々体が透けて行っているような……………気のせいではなさそう。 「そうか、オレも遂に選ばれたのか。」 自分の体が何処か違う場所へ運ばれて行くのを感じたのか、レオンさんは満足げに笑みを浮かべた。 「悪いなサガ、被害者の会(あいつら)にはよろしく言っておいてくれ。 オレは次の人生で今度こそ理想のハーレムを作って幸せになる、絶対に女の尻には敷かれない。」 「はぁ、そうですかお達者で。 ところでこの書類どうします? レオンさんの署名が必要なんですけど?」 「あぁ、これが異世界転位…………天にも昇るような気持ちだ。」 「いや、署名─────────」
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