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それはアリアに向けられたものであったが、余計な気を回した司会進行役が拡声器を近付けて前生徒会長の言葉を拾ったせいで悲鳴と歓声と怒号が1:1:1の割合で起こる。
密かに憧れていた前生徒会長からほぼド直球のアプローチを受けたアリアは平静を装うも赤面は隠せず、それが一層体育館中のどよめきを買う。
「では代表のアリアさん、優勝した感想と先程の前会長の件について一言お願いします!!
主に後者の方をメインで!!」
わざと騒ぎを大きくした下手人である司会進行役をキッと睨み付け拡声器を半ば奪い取るように受け取ったアリアは、
焦りと気恥ずかしさを隠すためわざとらしく何度か拡声器の声の通り具合を確かめるようにあーあーと何度か声を上げる。
そうして心を落ち着けると普段通りの生徒会長然とした顔を取り戻し、
「ご来場の皆様方、本日はお忙しい中お集まり頂きありがとうございます。
この学び舎で過ごす最後の年に、クラスの仲間と作り上げた劇で優勝の栄華に与る事が出来大変嬉しく思っております。
今日という日は、私にとってこれから先一生忘れられない日になるでしょう。」
スラスラと、用意して来た原稿を読み上げるような流暢さはしかし恥ずかしさの顕れでもある。
当たり障りのない、アリア自身の言葉がこもっていないスピーチにニヤニヤと奇妙な笑みを浮かべる者は少なくなかった。
「確かに幸運にも私達のクラスが優勝となりましたが、どのクラスも素晴らしい演し物であった事に違いはありません。
そう言った意味でも、この優勝トロフィーは今日参加した皆様のものとも言えるでしょう。」
「流石会長、本当に聞きたい事に関しては全く答えてもらえませんでしたがとても良い事を言いますね!!
ではこのまま会長として締めの一言をお願いします!!」
「はい………………そうですね。
この文化祭が私の生徒会長としての最後の行事になります。
再来週には生徒会選挙があり、私の3年に渡る生徒会活動も漸く終わりを迎えます。
思えば、中々大変な3年間でした。
入学と同時に半ば強引に生徒会に入れられ、会………前会長の思い付きに色々と振り回され新企画のために連休が潰れる事もありました。
当時はとんだ貧乏クジを引かされたものだと憤慨する事もありましたが、振り返ってみればとても充実した日々でした。」
「良いぞー会長!」
「会長サイコー!」
「お疲れっしたー!」
アリアの冗談っぽい愚痴と素直な告白に、生徒達は口々に労いの言葉を送る。
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