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キスティの優しさに抱かれたアリアは、大声を上げて泣いた。
今だけは聖女としての矜持も何もかも投げ捨て、堰を切ったように溢れ出す感情をそのまま吐き出すのであった。
「すいません、お見苦しい所を………………」
溜め込んでいたものを全て涙と共に吐き出したアリアは、憑き物が落ちたように再び聖女然とした凛々しさを取り戻す。
真っ赤に泣き腫らした目だけは当分戻る事はないが。
「ここにはアタシとお前しかいないんだ、気にしなくて良い。」
「おや、先生も………………」
「あぁ、アタシの一番弱い所を抉られた。
夢か幻だと気付いていたんだがな。
久し振りに教え子達に会って、懐かしくて暫く茶番に付き合っちまったよ。」
顔を上げたアリアは、キスティの充血した目に気付く。
頬には涙を零した跡が残り、既に吹っ切れたようには言うが後ろ髪を引かれているのが駄々洩れであった。
「先生のかつての教え子………私の先輩に当たる方々ですね。」
「多分アタシの記憶から再現したんだろうな。
見た目も喋り方も癖も何もかも、アタシが良く知るあいつらだった。
別れもアタシを引き留めるどころか全員で送り出しやがった。」
「恐らく本人すら自覚していない最も精神的な充足感を与える願望を見せているのだと思います。
そうでもないと、私があんなものを………………」
「しかし、よく戻って来れたな。
アタシは常に精神防御を張っているかおかげで比較的影響も少なく済んだし虚構だと気付けたが、お前はガッツリ嵌まったんじゃないか?」
「えぇ、そこはまぁ………被肉にも忘れたくても忘れられない記憶に助けられましたね。
楽しいばかりの偽りの記憶の影からこちらを覗いて来て、そのせいで本当の記憶と自分を取り戻せました。
………………あのような醜態を晒してしまいましたが。」
「それはキツかったな……もう大丈夫か?
動けるようなら直ぐに出るぞ。
恐らくアタシ達にクソッタレな夢を見せやがった元凶はあそこにいる。」
クイッとキスティが指差した先に浮かぶ、空中浮遊都市。
まるで大空の支配者を自称するかのように我が物顔で悠々と飛行を続けるそれは、
地上にて虚構の楽園に浸かる人々をせせら笑っているかのようであった。
「ならばこの落とし前はキッチリ付けさせないといけませんね。」
「当然だ。
アタシの傷を抉った報いを受けさせてやる。」
◆◆◆
「クソッ、こいつらマジでキリがねえ!!!!
殺さずに意識だけ奪うなんて器用な芸当オレには続けらんねえよ大将!!!!」
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